読切連載アカンタレ勘太 8《アトムごっこ》文・挿画  いのしゅうじ

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アカンタレ勘太 1-7

 

アトムの矢

アトムの矢

テッちゃんが自分のせきにつくなり、
「おもしろいんや」
と、カバンの中から一さつの本をとりだした。「少年」というまんがざっしだ。
ページをめくって、テッちゃんは「これや」と勘太に見せる。
『科学まんが 鉄腕アトム』という題で、ツノが二本でているようなかみ形の、たまごみたいな目をした男の子がえがかれている。
「てづかおさむ(手塚治虫)のまんがや」
テッちゃんはとくとくという。
「アトムはロボット。最初はアトム大使やった。ことしから鉄腕アトムになったんや」
武史がまんがをのぞきこんだ。アトムが月にむかってとんでいる。
「アトムごっこやろう」
とテッちゃんがいいだした。
「アトムをつくるんや」
「ロボットなんかつくれるわけないやろ」
といったやりとりがあって、
「弓をやろう。矢のさきにアトムの絵をつける」
と、ちえをだしたのは武史だ。
隆三のおとうさんに弓と矢の材料をたのむと、おとうさんは十人分そろえてくれた。
つぎの日曜日。武史の家で勘太とテッチャンが弓づくりにかかっていると、タミちゃんがユキちゃん、ヒロ子をともなってやってきた。 “読切連載アカンタレ勘太 8《アトムごっこ》文・挿画  いのしゅうじ” の続きを読む

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連載コラム・日本の島できごと事典 その16《米軍基地》渡辺幸重

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米軍射爆場新島設置絶対反対誓いの塔

太平洋戦争では、日本は「全滅」を「玉砕」、「退却」を「転進」、「敗戦」を「終戦」と呼びました。事実から目をそらす言い方は姑息にも思えますが、戦後日本を占領した米軍を「進駐軍(GHQ)」と呼んだのも同じような気がします。ただ“進駐”したのではなくて日本は“占領”されたのですから「占領軍」でしょう。こういう曖昧な態度だから駐留米軍はいまだに占領軍のようにふるまっているのではないでしょうか。
茨城県には一面に広がる花々で有名な国営ひたち海浜公園があります。太平洋戦争中は大日本帝国陸軍の水戸飛行場であり、戦後は米軍が接収して1973年(昭和48年)まで米空軍の水戸射爆場(水戸対地射爆撃場)だったところです。米軍機が標的めがけて模擬核爆弾の投下訓練などを行うのですが「模擬爆弾による農作物の被害」「ジェット機墜落による原野被害」「模擬爆弾による校庭被害」など257件の事件事故が相次ぎました。1957年8月には自転車で走行中の母子に低空飛行の米軍機が接触し、63歳の母親が即死、24歳の息子が重症という信じられない事件まで起きました。抗議と撤去を求める激しい運動の末、射爆場は1970年に演習を停止し、1973年3月に日本政府に返還されたのです。
ここからが島に関する話になるのですが、実は米国は日本政府が代替地を用意する条件で水戸射爆場の撤去を約束していました。いわゆる移転です。1964年1月、防衛庁(当時)は移転候補地に伊豆諸島の御蔵島(みくらじま)を内定しました。しかし、島民の強力な反対運動にあって断念に追い込まれました。この間の経緯は有吉佐和子の小説『海暗(うみくら)』に描かれています。次に日本政府は伊豆諸島・新島(にいじま)に目を付けました。1966年(同41年)に新島移転の話が表沙汰になり、1969年(同44年)3月に防衛庁の正式申し入れがありましたが、新島村議会が全員一致で絶対反対を決議し、美濃部東京都知事も反対するなど5年近い島内外の反対運動が続きました。結局、米軍は移転を断念し、水戸射爆場を代替地なしで手放したのです。新島には住民拠出のコーガ石でできた「米軍射爆場新島設置絶対反対誓いの塔」が建っています。
この話は沖縄の普天間飛行場の移転先として辺野古新基地が必要かという話に通じます。水戸射爆場移転断念という前例にならって県知事も県民も反対する辺野古新基地を断念し、普天間飛行場を撤去すればいいのです。
(写真はブログ「旅人がゆく」2016年5月より)

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山陽道・明石宿《蕪村の足跡をたずねて》文・写真 井上脩身

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蕪村が自らを描いた絵(『蕪村 放浪する「文人」』より)

ようやく春めいてきた。コロナ禍のなか、巣ごもりがつづいていたので、海が見たくなった。ふと「春の海――」という蕪村の句が頭をよぎった。讃岐に行く途中、須磨で詠んだといわれている。ならば明石宿で泊まったのではないか。芭蕉の句に「蝸牛角ふりわけよ須磨明石」がある。江戸の俳人は須磨と明石をひとまとめに捉えていたようだ。おそらく須磨で源平合戦を想い、明石で海の幸に舌つづみをうったのであろう。「宿場町シリーズ」ではたびたび芭蕉をとりあげてきた。明石は旅多い芭蕉の生涯の西端の地とされているが、今回はあえて須磨・明石で蕪村の足跡を探った。 “山陽道・明石宿《蕪村の足跡をたずねて》文・写真 井上脩身” の続きを読む

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