百鬼夜行夜話 003「小野篁」片山通夫

 

参議 小野篁 百人一首より

 

小野篁(おののたかむら)という人物がいた。昼間は帝(朝廷)に仕えていながら夜になると地獄の閻魔(えんま)大王庁に出仕し、大王の裁判の補佐をしていたという話だ。

 

 

 

 

彼が夜な夜な閻魔庁へ出仕するという出入り口が京都「六道の辻」にある六道珍皇寺という寺の境内にある井戸。平安時代の参議が閻魔庁に夜な夜な出かけて、アルバイトしていたという。おおらかな時代だったようだ。もっとも彼がいつ寝ていたのかわからないが、きっと昼は役所で居眠り三昧だった?

いずれにしてもよく働く人だった。調べてみたが、小野篁が閻魔大王に気に入られて、助手を務めたきっかけはよくわからない。

「六道」とは、仏教の教義でいう地獄道(じごく)・餓鬼道(がき)・畜生道(ちくしょう)・修羅(阿修羅)道(しゅら)・人道(人間)・天道の六種の冥界をいい、人は因果応報(いんがおうほう)により、死後はこの六道を輪廻転生(りんねてんせい)する(生死を繰返しながら流転する)という。 この六道の分岐点で、いわゆるこの世とあの世の境(さかい)(接点)の辻が、古来より当寺の境内あたりであるといわれ、冥界への入口とも信じられてきた。