アカンタレ勘太12-3《ダブルレインボー》文・画  いのしゅうじ

「勘太くん、ちゃんとすべれたがなぁ」
隆三のおとうさんはにっこりして、勘太の体をおこした。
タミちゃんは、勘太を見て安心したのか、浮きわにお尻をのせてサーとすべる。
「おもしろ~い」
タミちゃんのきんきんした声が山にこだました。
ユキちゃんも浮きわにのってつづく。
ひとまわりみんながすべったとき、イッ子せんせいが浩二につれられてやってきた。 “アカンタレ勘太12-3《ダブルレインボー》文・画  いのしゅうじ” の続きを読む

アカンタレ勘太12-2《すべり台の滝》文・画  いのしゅうじ

あしたから夏休み。
イッ子せんせいがちゅういする。
「あぶない水あそび、しちゃだめよ」
隆三が教室を出るとき、テッちゃんをつかまえた。
「滝ならええのとちがうか」
ぼくの家の裏山のおくや。人がひとり通るのがやっとの道を行くと、地元の人が「滑滝(なめたき)」とよんでる滝がある。
と隆三はいう。
「すべり台になりそうな滝なんや」
テッちゃんは勘太に声をかけた。
「おもしろそうや。あしたいっしょに行こ」
通りかかったユキちゃんが勘太をにらむ。 “アカンタレ勘太12-2《すべり台の滝》文・画  いのしゅうじ” の続きを読む

びえんと《写真と絵で見る昭和の子ども》文 Lapiz編集長 井上脩身

私ごとで恐縮だが、3年前、自分の子どものころの思い出をエッセーふうの童話にしてみようとおもいたった。書きだすと、挿し絵をつけたくなった。となると、そのころの子どもの遊びや風俗、都会や田舎の景色を知る必要がでてきて、10冊余りの本をかいこんだ。これらの図書の記述や写真が、すっかり忘れていた記憶を呼び覚ましてくれ、私なりに「昭和の子ども」という概念ができあがった。その概念が最近、ガツンとくずされた。『小学生が描いた昭和の日本』(写真左)という本に触れたからである。「児童画500点 自転車をこいで全国から」という副題の通り、一人の青年が全国をかけまわって集めた児童の絵が収録されたもので、今年1月、石風社から刊行された。昭和とは何か。本のページを繰りながら、私は考えこんでしまった。 “びえんと《写真と絵で見る昭和の子ども》文 Lapiz編集長 井上脩身” の続きを読む

連載コラム・日本の島できごと事典 その51《ピール島植民地政府》渡辺幸重

ナサニエル・セ-ボレーの直系子孫たち(20世紀前半撮影)

「泰平の眠りを覚ます上喜撰たつた四杯で夜も眠れず」という狂歌が詠まれたのは1853年6月、アメリカ東インド艦隊(司令長官:ペリー提督)が三浦半島・浦賀沖に現れたときのことです。ペリーは浦賀来航前の5月に琉球を訪れ、首里城で琉球国に通商を要求したあと小笠原諸島を探検しました。そのあと、浦賀に行き、さらに翌年3月に再訪して江戸幕府と日米和親条約を結ぶことになります。 “連載コラム・日本の島できごと事典 その51《ピール島植民地政府》渡辺幸重” の続きを読む

とりとめのない話《45秒のパフォーマンス》中川眞須良

大阪市内を南北に貫く幹線道路 御堂筋。
その中間当たり 本町付近の交差点の横断歩道上で 時々(月に1~2度)不思議な光景が見られる、と言う噂を耳にしてから半年程が経つ。そしてさらに知人から偶然飛び込んだ新しい情報は、
「私 見たわけではないんでが・・・・」と前置きしながら「モデル撮影のようなことをしているとか、、、、そんなのに興味あります? Nさん(私のこと)なら あるかも・・・」。 心の中で’「おおいにあります」と叫んでから さらにまた月日が流れた。 “とりとめのない話《45秒のパフォーマンス》中川眞須良” の続きを読む

原発を考える《怒りを込めて振り返れ! 原発》一之瀬明

チェルノブイリ原発4号機

ウクライナ政府は2022年2月24日、ロシア軍がチェルノブイリ原発を占拠したと発表した。ミハイロ・ポドリヤク大統領顧問は、ロシアによる「全く無意味な攻撃」は「今日のヨーロッパにおける最も深刻な脅威の一つ」だと述べた。
また最近になって、プーチンはロシアの核戦力部隊に戦闘態勢に入るよう命令した。どうもロシア軍、いやプーチンは最後には核を利用することも作戦の一つと考えているような気がする。しかし火遊びにしては危険すぎる。ロシアの政治体制がどの様になっているのかわからないが、「核のボタン」をプーチンが押すと決めた場合、プーチンのそばにいる誰かがそれを止めることが出来るのか。またプーチンの精神状態などをチェックする体制もあるのか。いささかどころでなく心もとないことである。 “原発を考える《怒りを込めて振り返れ! 原発》一之瀬明” の続きを読む

原発を考える《甲状腺がんの加害責任をただす》文 井上脩身

東京電力を相手に提訴した原告団 

~患者たちが東電相手取り提訴~
 福島第1原発事故後、甲状腺がんになった6人が1月27日、がん発症は事故が原因として東京電力対して6億1600万円の損害賠償を求める訴訟を東京地裁に起こした。チェルノブイリ原発事故後、子どもの甲状腺がんが急増したことから、福島事故の被曝によるがん発症の可能性が強く指摘されたが、国や福島県、東電は因果関係を否定してきた。今回の提訴は、原発事故とがんとの因果関係の有無を公判廷の場で明らかにするにとどまらず、将来を担う子どもの健康を守るという、最も基本的なことに目を背けてきた東電の非人道的姿勢を浮き彫りにするという意味でも極めて意義深い裁判になる。 “原発を考える《甲状腺がんの加害責任をただす》文 井上脩身” の続きを読む

写真散歩《滋賀県日野の雛祭り》片山通夫

《滋賀県日野の雛祭り》日野は近江商人発祥の土地でもある。近江国(現在の滋賀県)に本宅(本店、本家)を置き、他国へ行商して歩いた商人の総称で、大坂商人、伊勢商人と並ぶ日本三大商人のひとつ。 「近江の千両天秤」ともいうように、天秤棒1本から財を築き、三都(江戸、大坂、京都)をはじめとする全国各地に進出し、豪商と呼ばれるまでに発展していった。

2022春号 Vol.41《巻頭言》Lapiz編集長 井上脩身

天皇メッセージ 沖縄占領に関する昭和天皇の英文メッセージ(沖縄県公文書館HPより

今年5月15日、沖縄の本土復帰50周年を迎えます。しかし「沖縄の本土化」という沖縄県民の願いもむなしく、日本にある米軍基地の7割が沖縄に集中、さながら米軍の島と化しています。1月23日に投開票が行われた名護市長選では政府与党が推す現職候補が当選しました。名護市には米軍基地の建設工事が進められています。今年9月に任期満了になる沖縄県知事選が半年後に迫っており、いっそうの″米軍島化″を許すかどうかの分水嶺の年になりそうです。沖縄は戦時中、本土の捨て石にされました。戦後、捨てた石を米軍にほうりなげた形ですが、沖縄に犠牲を強いた一因に天皇の意思があったことが、近年、現代史研究家らによって明らかにされました。
沖縄が本土に復帰した1972年、日本の米軍基地のうち沖縄にあったのは59%でした。ところが50年後の現在、米軍施設の70%が沖縄に集中、沖縄本島の14・6%が米軍のフェンスに囲まれています。 “2022春号 Vol.41《巻頭言》Lapiz編集長 井上脩身” の続きを読む