読切り連載 アカンタレ勘太12-3《夢の作文》文・画 いのしゅうじ

勘太は夢のつづきをかんがえている。
ぼくとテッちゃん、ユキちゃん、タミちゃんはこてきたい。
ふえふきどうじのいしょうを着ている。
ぼくはよこぶえ、ユキちゃんはタンバリン、タミちゃんはもっきん、
テッちゃんはたいこ。
飛行機からおりると、みどりの丘からカネの音がきこえてくる。
赤いやねの、とんがり帽子のとけい台のカネだ。
イッ子せんせいが「カネの音に合わせてえんそうしましょう」という。
みんなで丘の上にあがる。 “読切り連載 アカンタレ勘太12-3《夢の作文》文・画 いのしゅうじ” の続きを読む

読切り連載 アカンタレ勘太12-2《新しょこくチャンバラ》文・画 いのしゅうじ

ぼくら虹の子
      三ねん一くみ 井田かんた
 じょうきひこうきで虹までとんで行きました。
ひこうきに、テッちゃんとユキちゃんと
タミちゃんものりました。
おおさかじょうが
みえました。虹はまるかったです。
くもに虹
がうつりました。すみよしのはしみたいでした。
虹につくと、イッ子せんせいがむかえて
くれました。
せんせいがいるので、ぼくはう
れしかったです。 “読切り連載 アカンタレ勘太12-2《新しょこくチャンバラ》文・画 いのしゅうじ” の続きを読む

読切り連載 アカンタレ勘太12-1《さかさレインボー》文・画 いのしゅうじ

おぼん明けのとうこう日。
イッ子せんせいが勘太をよんだ。
「かけた?」
「……」
「やっぱりわすれてる」
勘太の頭をげんこつでこつんとたたく。
「虹の子で作文かいてくれるんでしょ」
とせんせいにいわれ、勘太は隆三の家で見た虹をおもいだした。
「ぼくら、虹の子や」
(なんであんなこと言うたんやろ)
「武史にかいてもろたらどうですか」
「勘太くんにかいてほしいの」
「ぼ、ぼくには……」
せんせいは「かけません」と言わせない。 “読切り連載 アカンタレ勘太12-1《さかさレインボー》文・画 いのしゅうじ” の続きを読む

Lapiz 22夏号Vol.42 読切連載《アカンタレ勘太11-2》文・画 いのしゅうじ

がんりゅう島のけっとう

勘太がふりかえると、勝也がうでぐみをしてにらんでいる。
1年生の冬、タイコ橋のらんかんをすべらされてから、勘太は1学年上の勝也とは目をあわせないようにしてきた。
その勝也が裕三と徹をつれている。徹はともかく、裕三まで手下になるやなんて。
大ショックの勘太。ヘラクレスオオカブトににらまれたテントウムシみたいに、ぶるぶるふるえている。
武史が勝也のほうに一歩ふみだした。
「カブトムシをとって、なぜいけないんですか」
「アカンにきまってる。神社のきょかがいるんや」
「勝也さんはきょかをもらってるのですか」
「あたりまえや。宮司さんにもろた」
「いつ」
「きのう」
「このお宮さん、きょねんから宮司さんいません」
「え!」
武史に一本とられ、いっしょにカブトムシとりをするのをみとめた勝也。こんどは、
「どっちがようけ取れるか、きょうそうや」
といいだした。
テッちゃんと勘太は、武史から「じゅえきがある木を見つけるんや」と教えられたとおり、カブトムシをさがす。
30分でカブトムシが5匹、クワガタムシが3匹とれた。
勝也たちは、めったやたら林のなかをうごきまわり、カブトムシがいそうにないサクラの木までゆすっている。
裕三が勝也にかくれて、くるくるパーのしぐをした。裕三もほんとうは勝也がきらいなのだ。
勝也組がとれたのはカブトムシ1匹とクワガタムシ3匹だけ。
「まけた」
とは勝也はいわない。
「オレのカブトムシとおまえらのカブトムシ。しょうぶや」
きりかぶの上でたたかわせることになった。おちたり、ひっくりかえったりした方がまけだ。
武史組の戦士はいうまでもなくムサシ。勝也のはツノが1本にみえる。武史が小さな声で「コジロウ」といった。
「ぼくらが勝ちます」
武史は自信たっぷりだ。
「なんでや」
「がんりゅうじまです」
勝也は「なんのことや?」と目をぽそぽそさせた。
「いや、別に……。けっとう、はじめましょう」
コジロウとよばれているとは知らない勝也のカブトムシは、きりかぶの上でのそのそしていて、おちつきがない。
武史はムサシを手のひらにのせ、コジロウのようすをうかがっている。
「武史、はよせえ」
勝也はいらいらして、しょうぶをせかす。
「ええ、すぐに」
武史は少しじらして、ムサシをきりかぶにおいた。
しょうぶはあっという間についた。
ムサシはツノでコジロウを体ごとすくいあげ、ぽーんとほうりなげた。コジロウは頭からまっさかさまに、きりかぶからおちていった。
勝也は、まさか!という顔だ。
「武史くん、きみはすごいなあ」
よびすてから「くん」がつき、おまえから「きみ」に変わっている。
みんなでカブトムシとクワガタムシを1匹ずつ分けることにした。
帰りみち、勘太は武史にきいた。
「宮司さんいないって、なんで知ったんや?」
「社務所のカギさびてた。使ってないしょうこや」
ひくい声だ。いいかたがどこか大人びている。
(武史は、ぼくとちがうせかいの子なんや)
勘太は二人におくれて、とぼとぼと歩きだした。(完)

Lapiz 22夏号Vol.42 読切連載《アカンタレ勘太11-1》文・画 いのしゅうじ

カブトムシのムサシ

夏休みになると、テッちゃんは毎日のように、勘太をセミとりにさそいにくる。
きょうのテッちゃんは、広いおでこがいつもよりテカテカしている。いいことがあるしるしだ。
「カブトムシいる林、にいちゃんに教えてもろたんや」
国鉄のせんろちかくのお宮さんの森だという。
「いまからカブトムシがりに行こ」
「あのお宮さん、よその地区のや。虫とりなんかしたらおこられへんか」
「神さんにおまいりしたらええねん。そしたら、なんぼでも持っていけっていうてくれはる」
(そんなけっこうな神さん、いはるやろか) “Lapiz 22夏号Vol.42 読切連載《アカンタレ勘太11-1》文・画 いのしゅうじ” の続きを読む

アカンタレ勘太12-3《ダブルレインボー》文・画  いのしゅうじ

「勘太くん、ちゃんとすべれたがなぁ」
隆三のおとうさんはにっこりして、勘太の体をおこした。
タミちゃんは、勘太を見て安心したのか、浮きわにお尻をのせてサーとすべる。
「おもしろ~い」
タミちゃんのきんきんした声が山にこだました。
ユキちゃんも浮きわにのってつづく。
ひとまわりみんながすべったとき、イッ子せんせいが浩二につれられてやってきた。 “アカンタレ勘太12-3《ダブルレインボー》文・画  いのしゅうじ” の続きを読む

アカンタレ勘太12-2《すべり台の滝》文・画  いのしゅうじ

あしたから夏休み。
イッ子せんせいがちゅういする。
「あぶない水あそび、しちゃだめよ」
隆三が教室を出るとき、テッちゃんをつかまえた。
「滝ならええのとちがうか」
ぼくの家の裏山のおくや。人がひとり通るのがやっとの道を行くと、地元の人が「滑滝(なめたき)」とよんでる滝がある。
と隆三はいう。
「すべり台になりそうな滝なんや」
テッちゃんは勘太に声をかけた。
「おもしろそうや。あしたいっしょに行こ」
通りかかったユキちゃんが勘太をにらむ。 “アカンタレ勘太12-2《すべり台の滝》文・画  いのしゅうじ” の続きを読む

アカンタレ勘太12《キュウリ弁当》文・画  いのしゅうじ

 勘太のおかあさんがえがおを作って、北島八百屋のおくさんにペコペコしている。
「エイちゃんはすごい。エイちゃんをやとったおくさんはもっとすごい」
ちょうどエイちゃんがご用聞きからかえってきた。
「勘太くん、大丈夫ですか」
「勘太はね、どんなヘマをしてもさーっと忘れてしまう。アカンタレのええとこやね」
おかあさんはくすっとわらって、
「お礼に何がええやろか」
と、野菜をあれこれみまわす。
キュウリを手にとった。緑がつやつやしている。
「キュウリ五貫目(19キログラム)ちょうだい」
エイちゃんはそろばんをはじいて、
「130本くらいになります。そんなにたくさん、何にするんですか」 “アカンタレ勘太12《キュウリ弁当》文・画  いのしゅうじ” の続きを読む

読切連載アカンタレ勘太 11-2《板イカダのそうなん》文・挿画  いのしゅうじ

勘太のおにいさんの淳吉が「日本の秘境」という本をひらいた。

おかあさんに買ってもらったばかり。めずらしい風景の写真がもりだくさんだ。

淳吉の目はイカダの写真にクギづけ。題は「瀞(とろ)峡の筏(いかだ)下り」。瀞の岩と岩のあいだをイカダがぬっていく。

瀞峡は近畿南部の山奥の深い谷だ。イカダ師はあら波をものともしない、とかいてある。 “読切連載アカンタレ勘太 11-2《板イカダのそうなん》文・挿画  いのしゅうじ” の続きを読む

読切連載アカンタレ勘太 11-1《しんぞうやぶりの丘》文・挿画  いのしゅうじ

「スクーターが入った」

テッちゃんがこうふんしている。

「ラビットや。かっこええねん」

ラビットスクーターはさいきん、都会ではやりだした。クスリの会社につとめているテッちゃんのおとうさんは新しがりやなのだ。

勝がテッちゃんの机の前にたった。

「うちはバタコや」

勝の家のまわりは昔からスギの山。勝のおとうさんは材木の運送をはじめようと、中古のオート三輪を知り合いから安く買いとった。

と勝はいう。 “読切連載アカンタレ勘太 11-1《しんぞうやぶりの丘》文・挿画  いのしゅうじ” の続きを読む