読切り連載 アカンタレ勘太12-2《新しょこくチャンバラ》文・画 いのしゅうじ

ぼくら虹の子
      三ねん一くみ 井田かんた
 じょうきひこうきで虹までとんで行きました。
ひこうきに、テッちゃんとユキちゃんと
タミちゃんものりました。
おおさかじょうが
みえました。虹はまるかったです。
くもに虹
がうつりました。すみよしのはしみたいでした。
虹につくと、イッ子せんせいがむかえて
くれました。
せんせいがいるので、ぼくはう
れしかったです。 勘太がおきるなり、おぼえているいうちにと、いそいでかいた作文だ。
「クラタせんせもいました」とかいたけど消した。
題やなまえも入れると、作文ようしの半分がうまっている。
勘太の作文はこれまで五行がやっと。
「さいこうや」
しぎょうしきの日、勘太はまっ先にイッ子せんせいに作文をだす。
「虹についてからどうしたの」
「それは……せんせいにきかないと」
「せんせいにわかるはずないじゃないの」
イッ子せんせいは、
「そうか、またまた夢を見たんだ」
クククッとわらって、
「じゃあ、つづきも見るのよ」
つづきを書いて三日ごにだすように、とせんせい。
勘太の頭の中は「虹 虹 虹」。虹の字がどろどろと、とぐろをまいている。
家で作文ようしとにらめっこしていると、テッちゃんが「ふえふきどうじごっこをやろう」とさそいに来た。
「ふえふきどうじ(笛吹童子)」は武芸のたつじんの兄、萩丸と、
笛の名手の弟、菊丸のものがたり。
ことしの一月から土、日をのぞく毎日、夕方の十五分間、
ラジオでほうそうしている。
勘太は、ばんぐみのはじめにながれる曲が大すきだ。
♪ヒャラリヒャラリコ ヒャリコヒャラレロ だれが吹くのかふしぎな笛だ 
「ふえふきごっこ?」
テッちゃんはよこ笛がわりに、長さ三〇センチくらいの棒を手にしている。
「菊丸のぼくが笛をふく。勘太は萩丸。刀をつかう」
「チャンバラにならへん」
「新しょこくチャンバラなんや」
「新しょこく」というのは、
「笛吹童子」が「新諸国物語」シリーズの第二作だからだ。
「ふえふきどうじはお寺があう」とテッちゃんがいうので、
まんかん寺にむかった。
お寺では女の子がゴムとびであそんでいる。
「男のあそびのええとこ見せるんや」
テッちゃんが笛をふくしぐさをしたとき、
じゅうしょくのまんかんさんが本堂からでてきた。
一年生のとき、お寺のよこのどろの川でドジョウとりをしていて、
テッちゃんがすくったアミで、勘太が頭からどろだらけになった。
まんかんさんはドロすくい事件をおぼえていて、
「アカンタレ、ちょっとはかしこなったかいな?」
と、にたにたしている。
棒を刀にして勘太がきりかかる。
テッちゃんが笛をふく。勘太はうごけなくなる。
というのがルール。
♪タンタンタンタンタンタンタンタンタンタンタンタン 野こえ山こえ
テッちゃんがうたう。勘太はただつったっている。
ちっともおもしろくない。
「あんまり成長してへんな」
まんかんさんはワハハとわらって、カネつき堂にあがった。
ゴーン!
(そや、カネや)
勘太のにぶい頭になにかがひびいた。