とりとめのない話《国鉄一人旅 一村旅館》中川眞須良

均一周遊券を二重ポケットの奥にしっかりとしまい込み右肩からカメラをぶら下げ、左肩には数枚の下着とタオル 1~2個のりんごとチーズ モノクロフィルム7~8本そしてJTBの時刻表が詰まったやや大きめのくたびれたショルダーバッグ、これが当時私の旅姿の定番である。

その旅の目的はただ一つ 地元のローカル色あふれる人々の表情を一人でも多くフィルムに収めることである。したがってその期間中(7日~10日間)は目的地なし 訪問希望地なし 宿泊地の予約等一切なしのいわゆる「行方定めぬ波枕」である。その日も盛岡駅で午後3時を過ぎていた。そろそろ夜のねぐらを決めなければいけない。小遣いもまもなく底をつくので今夜は当然車中泊 と決めたもののまだ長距離夜行列車に乗る時間ではない。その時 ホームでの列車案内のアナウンスが大きく聞こえた。「・・a分発の花輪線回り 普通列車大館行は・・b番線からの発車です・・・・・」と。初乗り線で大館、、、? 時間つぶしには最適!である、早速b番線へ。

何年製造?の車両なのか 古い3両連結のデイーゼル普通列車。大きなエンジン音でホームの端に止まっていてすぐの発車だった。この時の乗車率 凡そ6割。好摩(こうま)を過ぎ花輪線に入るとそれまで軽快に走っていたスピードがかなり落ちた事と自分の想像以上の各駅での学生が混じる乗降客の多さは、その地のローカル色をさらに濃くしていると感じた。湯瀬駅に止まった。 “とりとめのない話《国鉄一人旅 一村旅館》中川眞須良” の続きを読む