読切連載アカンタレ勘太 8《アトムごっこ》文・挿画  いのしゅうじ

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アカンタレ勘太 1-7

 

アトムの矢

アトムの矢

テッちゃんが自分のせきにつくなり、
「おもしろいんや」
と、カバンの中から一さつの本をとりだした。「少年」というまんがざっしだ。
ページをめくって、テッちゃんは「これや」と勘太に見せる。
『科学まんが 鉄腕アトム』という題で、ツノが二本でているようなかみ形の、たまごみたいな目をした男の子がえがかれている。
「てづかおさむ(手塚治虫)のまんがや」
テッちゃんはとくとくという。
「アトムはロボット。最初はアトム大使やった。ことしから鉄腕アトムになったんや」
武史がまんがをのぞきこんだ。アトムが月にむかってとんでいる。
「アトムごっこやろう」
とテッちゃんがいいだした。
「アトムをつくるんや」
「ロボットなんかつくれるわけないやろ」
といったやりとりがあって、
「弓をやろう。矢のさきにアトムの絵をつける」
と、ちえをだしたのは武史だ。
隆三のおとうさんに弓と矢の材料をたのむと、おとうさんは十人分そろえてくれた。
つぎの日曜日。武史の家で勘太とテッチャンが弓づくりにかかっていると、タミちゃんがユキちゃん、ヒロ子をともなってやってきた。 “読切連載アカンタレ勘太 8《アトムごっこ》文・挿画  いのしゅうじ” の続きを読む

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読切連載 アカンタレ勘太 7《しらゆき雪ひめ》文・挿画 いの しゅうじ

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しらゆき雪ひめ

 イッ子せんせいは、いつもの顔にもどっている。
「クラタせんせいはただのお友だちよ」
二人は若い教師でつくる「新しい教育を考える会」のメンバーだという。
がっこうがおわって、テッちゃんと勘太が帰ろうとすると、タミちゃんがかけよってきた。
「イッ子せんせいの言うこと、マにうけたんか」
タミちゃんは教室にのこっていたヒロ子をよんだ。
リブレバレイ教室にかよっているヒロ子は「あのことやね」と目くばせした。
「らいげつ、バレエきょうしつのはっぴょうかいがある。イッ子せんせいに招待券を二枚わたすねん」
タミちゃんはにやっとした。
「イッ子せんせいがクラタせんせいと見にきたら、友だちいじょうということがはっきりするやん」
つぎの日、
ヒロ子はイッ子せんせいにバレイの券を手わたした。券にかかれているプログラムは、
「しらゆき雪ひめ」
「まちがいじゃないの」
ヒロ子はフフフとわらった。
「見たらわかります。したしい人ときてください」
イッ子せんせいから「見に行く」の答えがかえってきたので、武史を中心にさくせんをねった。
一番前のまんなかの二つのせきを「予約席」にしてかくほ。そのりょうがわにユキちゃんとタミちゃん、男子はうしろのせきにじんどる。
「二人のようすがわかるはずや」
と武史。
はっぴょう会は市のホールでひらかれた。
「予約席」のはりがみをするのは勘太のやくめ。勘太はまっさきにホールにきて、せきに紙をおいた。
はりがみが何かのひょうしにおち、だれかが一つよこのせきにのせた。
とは勘太は知らない。
まくがあく少し前に、イッ子せんせいがやってきた。クラタせんせいといっしょだ。
イッ子せんせいはタミちゃんを見て、
「こんたん見え見え。だったらいっそのことと、クラタせんせいをさそったの」
二人が一番前のせきに行くと、二つの「予約席」がとなりあっていず、その間に一つのせきがある。
イッ子せんせいが「あら?」と小さくおどろいた。勘太が予約席のところにいくと、クラタせんせいが、
「勘太くんやね、たしか。ここにすわればいい」
と、間のせきに座らせた。
勘太がイッ子せんせいとクラタせんせいの間にわりこむかたちだ。
「こんなん、あきません」
と、せきを立としたとき、
「しらゆき雪ひめ」
がはじまった。
王女においだされて、森のなかで七人の小人とくらす白雪姫は、毒リンゴを食べてたおれる。そこに王子さまがとおりかかり、二人はむすばれる。
というおはなし。
リブレバレイきょうしつでは、白雪姫と王子さまは高校生くらいの子がえんじるのがならわし。ところが、ヒロ子がぐーんとじょうたつしたので、「小学生にも姫をやらせてみよう」ということになった。お姉さんは「白雪姫」、ヒロ子は「しらゆきひめ」だ。
一つのぶたいで「白雪姫」と「しらゆきひめ」が同時におどるのは、教室はじめって以来のこと。
(新しい時代になったんだわ)
イッ子せんせいの胸はきゅんとなっている。
ヒロ子のしらゆきひめがクルクルまいだした。
はなやかさでは、お姉さんの白雪姫にはとてもおよばないが、体いっぱいにつやつやとはねる。
いよいよ、おひめさんが王子さまとおどるクライマックス。というのに、テッちゃんは前にいる勘太の頭をこずいている。
「なんでせんせいの間にすわったんや」
イッ子せんせいはクスクスわらっている。

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読切連載アカンタレ勘太 6《てつぼう先生》文・挿画 いの しゅうじ

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てつぼう先生

テッちゃんは鉄棒に足をかけてぶらさがっている。
勘太から、鉄棒でクルクルまわるたいそう選手のことを聞いて、自分でもかいてんしてみようと思ったのだ。
隆三が「やめとけ」と鉄棒から引きずりおろした。
「教えてもらわんとムリや」
「教えてくれるとこあるんか」
「カブノしょうがっこうの子は、かいてんできるんやで」
カブノしょうがっこうは隆三の家から歩いて二十分くらいの山あいにある。
「もくげきしたんや」
隆三はむずかしい言葉をつかった。
さっそく、ていさつにむかった。隆三、テッちゃんに勘太、武史、裕三。いつものメンバーだ。
カブノしょうがっこうの鉄棒は、通りぞいにたっている。男のせんせいが見まわりにやってきた。ややまる顔、しゃきっとした青年きょうしというかんじ。
「あのう、鉄棒でぐるぐる回ると聞いたんですけど」
武史がせんせいにたずねると、
「きみたちはどこのがっこう?」
「オゼしょうがっこう、二年」
「宮井せんせいのクラス?」
「あ、そうです」
「イッ子せんせいってよんでるやろ」
「なんで知ってるんですか」
「まあな、ええ人やろ」
せんせいはこうていにのこっていた四人をよんだ。
「クラタてつぼうをやってくれ」
四人はさかあがりをして、鉄棒にはいあがる。オランウータンみたいに両手で棒をもつ。そして一番右の子から順に、後ろむきにくるっとまわる。頭をさげてさかさにぶらさがると、かいてんの勢いにのって前方にぴょーんととびはねる。
それは目もとまらぬ早わざだ。
勘太が目をラムネ玉みたいにして、ぼーっと見とれていると、
せんせいが、
「やってみる?」
と、ほほえみかける。
「さ、さかさになるの、ぼ、ぼくいやです」
もぞもぞした言い方がよほどおかしかったらしい。
「ひょっとして、きみが勘太くん?」
顔をのぞきこんで、
「あたり!」
ガハハとわらった。
せんせいは、みんながクラタてつぼうができるまで半年かかったという。
「小野せんしゅみたいなとくべつなせんしゅを育てるのもいいが、みんながやれることのほうがもっとだいじや」
勘太は、おねえさんが「小野せんしゅは金メダルがとれる」と言っていたのを思いだした。
カブノしょうがっこうからの帰り道。
「クラタせんせい、なんでぼくのなまえ知ってるんやろ」
勘太は首をかしげてもたもた歩く。
「イッ子せんせいと呼んでることも知ってはった」
と隆三。
「イッ子せんせいはええ人や、というてたなあ」
テッちゃんが夕やけ空を見あげた。目があかね色にそまっている。
よく日。
きゅうしょくがおわると、テッちゃんがイッ子せんせいのつくえの前にたった。
カブノしょうがっこうの鉄棒のことをはなし、
「クラタせんせいにあいました」
「え!」
「せんせいのこと、いい人と言うてました」
「……」
イッ子せんせいのほっぺが、いっしゅんぽっとあかくなった。

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読切連載《アカンタレ勘太》5-2 作・画 いのしゅうじ

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夏の思いで

夏の思い出

夏やすみもあと五日。
勘太はしゅくだいの「夏やすみのおもいで」の絵をまだいかいていない。あわてだした
画用紙とクレヨンをとりだし、頭にうかんだ順にまとまりもなくかきだした。
さいしょにながれ星。画用紙のいちばん上にかいた。その下にアラカンの白馬。保津峡でのキャンプをおもいだし、じょうき機関車をグレー色であらわす。川をえがこうとして、川なら天の川をにしようと考えなおす。いちばん白にカヤをかきいれた。
二学期がはじまり、みんながそれぞれの「夏やすみのおもいで」の絵をだした。海や山、花火、おばあちゃんの里。どれもこれも元気があふれている。 “読切連載《アカンタレ勘太》5-2 作・画 いのしゅうじ” の続きを読む

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