連載コラム・日本の島できごと事典 その84《日米共同作戦計画》渡辺幸重

 2021年12月、共同通信のスクープで台湾有事に関する「日米共同作戦計画」の存在が明らかになりました。中国軍と台湾軍の間で戦闘が発生した初期の段階で米海兵隊と自衛隊がどのように対応するか、という内容です。日本政府は「重要影響事態」と認定して自衛隊が米海兵隊を支援し、琉球弧(南西諸島)の島々に小規模に分かれて展開し、臨時の攻撃用軍事拠点を設置するとなっています。

展開する島は約40カ所の有人島が候補とされており、海兵隊の高機動ロケット砲システム「ハイマース」を配置して海上封鎖を行い、米海兵隊の新運用指針「遠征前方基地作戦(EABO)」に基づく共同作戦を展開して中国軍を攻撃するというのです。
日米両政府は詳細を明らかにしていませんが、今年1月にオンライン開催された日米安全保障協議委員会(日米「2+2」)において計画は承認され、「緊急事態に関する共同計画作業について確固とした進展を歓迎した」と発表されました。

琉球弧には、米軍基地・施設が沖縄島、伊江島に、自衛隊基地・施設が奄美大島、沖永良部島、久米島、宮古島、与那国島にあり、石垣島には自衛隊基地が建設中、種子島の横の馬毛島には米軍訓練施設にもなる自衛隊基地が計画中です。このうち石垣島、宮古島、沖縄島、奄美大島にはミサイルが配備されようとしています。日米共同作戦計画にある40島はこれらの島に加えて空港のある島はすべて対象になると思われ、さらに主要な有人島を加えて40余島を選ぶと図のようになります。台湾有事の際にこれらの島々にミサイルを配備すると、中国大陸をぐるりとミサイルが囲むことになります。すでに自衛隊基地がある九州島と壱岐・対馬まで結ぶと台湾から朝鮮半島まで数珠つなぎになる“要塞列島”が完成します。

今年8月にアメリカのペロシ下院議長が台湾を訪問し、これに反発した中国が台湾周辺で大規模な軍事演習を行いました。一方、日米も中国を封じ込めようと大規模軍事演習・訓練を繰り返しています。今年11月10~19日には全国で自衛隊と米軍による日米共同統合演習「キーン・ソード23」が実施され、与那国島では公道を初めて自衛隊の戦闘車が走り、米海兵隊員が与那国駐屯地に入りました。沖縄島の中城湾港などの民間施設も使用され、奄美群島の徳之島でも初めて離島奪還訓練が行われました。

日米共同作戦計画は、台湾有事に米軍が参戦するとほぼ自動的に日本が米中間の戦争に巻き込まれることを示しています。琉球弧に住む人々の命と生活が脅かされないか心配でなりません。そして、琉球弧が戦場になるとすぐに戦火は日本列島全体に広がるでしょう。憲法9条がある日本で戦争が起きるとは不思議なことです。