原発を考える《原発事故がもたらす″心災″001 》文 井上脩身

~実証経済学から減災策探る~

  1. 『福島原発事故とこころの健康――実証経済学で探る減災・復興の鍵』

    福島第1原発事故によって避難暮らしを余儀なくされた人たちは、さぞ精神的に辛い思いをしたであろうとはだれもが思う。長い間住み慣れた家を失い、仕事を失い、温もりある家庭を失い、そして古里を失った被災地の人たち。ニッセイ基礎研究所研究員の岩崎敬子氏がその心の変化に焦点を当て、5回にわたって同原発の立地自治体である福島県双葉町の住民アンケートを実施。その結果を分析したレポートが、『福島原発事故とこころの健康――実証経済学で探る減災・復興の鍵』として、日本評論社から出版された。被災者へのアンケート自体はこれまでも政府やマスコミ各社が行っているが、岩崎レポートは「こころの減災」をキーワードに、被災者の心の内部に迫っている。 “原発を考える《原発事故がもたらす″心災″001 》文 井上脩身” の続きを読む

宿場町シリーズ《山陰道・樫原(かたぎはら)宿 下》文・写真 井上脩身

江戸の面影のこす本陣建物

明智川の異名がある山陰道沿いの川

7月末、35度を超える猛暑のなか、樫原を訪ねた。桂駅のすぐそばに大宮社という小さな神社がある。松尾七社の一社とされ、ここから西に向かって幅5メートルの道をすすむ。旧山陰道である。道沿いに小畠川という細い川が流れている。「明智川」という異名がある。あるいは亀山(現亀岡)から老ノ坂を越えた明智光秀が、この川のあたりで「敵は本能寺にあり」とゲキをとばしたのかもしれない。 “宿場町シリーズ《山陰道・樫原(かたぎはら)宿 下》文・写真 井上脩身” の続きを読む

宿場町シリーズ《山陰道・樫原(かたぎはら)宿 上》文・写真 井上脩身

蛤御門の変の3志士竹やぶに眠る 

蛤御門の変(禁門の変)が起きた京都御所の門

阪急の桂駅(京都市西京区)からバスで老ノ坂峠に向かう途中、古い町家が建ち並ぶ街を通った。後で調べると、樫原(かたぎはら)という旧山陰道の宿場であり、幕末の動乱の渦のなかで起きた蛤御門の変(禁門の変)のさい、ここで長州勢の3人が非業の死をとげたと知った。老ノ坂峠は平安時代の伝説「大江山の鬼退治」の舞台とされ、私はその現地をたずねようとしていたのだった。幕府にとって、長州は鬼だったであろう。時代が変わると、退治されるはずの鬼が鬼神にまつりあげられることはよくある。この3人はどうであったのだろうか。 “宿場町シリーズ《山陰道・樫原(かたぎはら)宿 上》文・写真 井上脩身” の続きを読む

連載コラム・日本の島できごと事典 その37《オリンピック作戦》渡辺幸重

 第二次世界大戦の沖縄戦は1945年(昭和20年)3月26日午前8時過ぎ、慶良間(けらま)列島の阿嘉島を米軍が攻撃し、上陸することから始まりました。翌日までに列島全体を占領し、さらに沖縄本島での激しい陸地戦となり、6月23日に日本軍の組織的戦闘が終わって沖縄全域が連合国軍の支配下に置かれました。 “連載コラム・日本の島できごと事典 その37《オリンピック作戦》渡辺幸重” の続きを読む

徒然の章《「稲むらの火」の広川町を訪ねて》中務敦行

いなむらの火祭り

「稲むらの火」という言葉を聞いた方は多いと思う。地震(1854年12月23日朝)がおきた時、広村(現和歌山県・広川村)の人たちは津波を心配して、広八幡神社に避難し、被害がなかったことを喜び合った。全国で2~3000人が犠牲になった。安政の大地震と言われる大災害だ。 “徒然の章《「稲むらの火」の広川町を訪ねて》中務敦行” の続きを読む

連載コラム・日本の島できごと事典 その36《島の高級ホテル》渡辺幸重

 

当時の浜名湖ホテル

「島の高級ホテル」というと、最近次々にオープンしている沖縄の外資系ホテルを思い浮かべるでしょうが、今回は静岡県の島で開業した戦前と戦後の二つのホテル「浜名湖ホテル」と「淡島ホテル」を紹介します。 “連載コラム・日本の島できごと事典 その36《島の高級ホテル》渡辺幸重” の続きを読む

びえんと《夫婦別姓拒否論にみる戦前回帰主義》Lapiz編集長 井上脩身

びえんと①合憲 最高裁の合憲判断に抗議の声をあげる申立人(ウィキベテアより)

選択的夫婦別姓の制度化を求める声が高まるなか、最高裁大法廷(裁判長・大谷直人長官)は6月23日、別姓を認めない民法の規定を合憲とする決定をした。この3カ月余り前、「同性同士の法律婚を認めないのは違憲」とした札幌地裁の画期歴な判断との余りのギャップに私は愕然とした。札幌地裁は憲法が規定する「法の下の平等」を直視したのに対し、最高裁は我が国に今なお根強い「男性優位の婚姻」という現状を重視したのである。憲法が公布されて75年になる今、法の番人である最高裁が憲法を軽んじる判断をしたという事実を深刻に受け止めねばならない。それは戦前の明治憲法体制への回帰を、最高裁が黙認したことになるからである。 “びえんと《夫婦別姓拒否論にみる戦前回帰主義》Lapiz編集長 井上脩身” の続きを読む

《Vol. 39 巻頭言》 Lapiz 編集長 井上脩身

冒頭から個人的なことで恐縮ですが、私はいま、源頼光(948~1021年)の「大江山の鬼退治」のことを調べています。渡辺綱ら頼光四天王を引き連れ、大江山で鬼を退治したという説話は、やさしい読み物として子どもたちに読みつがれてきました。山奥から都にでてきて、若い女性をさらうなどの悪事をはたらく鬼どもをやっつける武者たち。剣をふるっての縦横無尽の活躍に、子どものころの私は胸を躍らせました。 “《Vol. 39 巻頭言》 Lapiz 編集長 井上脩身” の続きを読む