夏の千夜一夜物語《置いてけ堀》構成・片山通夫片山通夫

釣り人が魚を持って帰ろうとすると、「おいてけ~」という不気味な声が聞こえることから「おいてけ堀」と名づけられた掘りがありました。
その声のあまりの怖さに、みんな釣った魚を放り投げて帰ってしまうのです。それを聞きつけた魚屋。嫁が止めるのも聞かずに、魚天秤とねじり鉢巻姿でお堀へ向かいます。

さんざん釣って帰ろうとすると、やはりお堀から「おいてけ~」の声が……。魚屋は言うことを聞かず、啖呵を切って一目散に走ります。柳の下までくると、カランコロンと下駄の音。
「魚を売ってください」という女に、みんなに見せるまではダメだと断ると、「これでもかえ?」と、女の顔がのっぺらぼうに……。
魚を放り出し慌てて逃げる魚屋。途中見つけたそば屋で水をもらおうと、店主の顔を見れば、またもやのっぺらぼう。腰の抜けた魚屋、どうにか家までたどり着き、嫁に一部始終を話すのですが……。