あれから10年《東日本大震災》Lapiz編集長 井上脩身

田老「万里の長城」の10年
~人はなぜ逃げないのか~

田老4巨大防潮堤.

私には今も目に焼き付いて離れない1点の新聞写真がある。「万里の長城」といわれた岩手県宮古市田老の防潮堤を乗り越える津波をとらえた写真だ。2010年6月15日付の毎日新聞に掲載された。私は掲載日の10日余り前、田老の現場をたずねていた。目にしたのは木っ端みじんに破壊された防潮堤であった。この写真と現場で見た現実を重ね合わせると、津波の破壊力は人知を超えているというほかない。「津浪太郎」の異名があるほどに田老の人たちは津波の怖さを知っていた。にもかかわらず188人の死者がでた。その多くは逃げ遅れたか、逃げる途中だった。なぜ、さっさと逃げなかったのだろう。東日本大震災から10年がたった今なお、その疑問が解けないでいる。 “あれから10年《東日本大震災》Lapiz編集長 井上脩身” の続きを読む