原発を考える《思考停止の国民が許す》山梨良平

東京電力 柏崎苅羽原発

柏崎刈羽原発、89カ所で安全工事せず テロ対策以外でも不備」という見出しの記事は毎日新聞電子版。(2021/6/10 19:15)
所謂平和ボケといわれるテロ対策の遅れはいかんともしがたいが、それ以外でも安全工事がされていなかったというのには驚く。同時にわが国の国民の眼はもはや曇りきっていると言えるのではないか。
たった10年前の大地震、フクイチの悲惨な状況も十分に検証しないまま今に至っているのも全くの思考停止に陥っている国民だからなのか。政治に、原発に、自然災害にそして近い将来、必ず来るといわれている南海トラフ地震・・・・。我々の周りには危険が山積しているにもかかわらず、国民からのアクションは少ない。挙句の果てにフクイチのたまりに溜まった汚染水を2年後に海に流すとか…。

話を東京電力に戻す。新潟県柏崎にある柏崎刈羽原発では、NHKが2021年4月7日に次のように伝えた。
「柏崎刈羽原子力発電所でテロ対策に重大な不備があったとして、原子力規制委員会が東京電力に行政処分を行う方針を決めたことについて、東京電力は7日、弁明を行わないと回答しました。これにより、行政処分が確定することになり、改善されたと判断されるまで柏崎刈羽原発は再稼働できない状態が続くことになります。」
つまり「テロの標的になる危険があるにもかかわらず、その対策をとってこなかった」という意味に解することができる。もっと言えば危険を承知で何も対策を講じなかったということだ。
この話にはおまけがある。6月10日の毎日新聞は「柏崎刈羽原発、89カ所で安全工事せず テロ対策以外でも不備」と。
こうなったら東電は「国民をなめてかかっている」としか思えない。
毎日新聞⇒ https://mainichi.jp/articles/20210610/k00/00m/040/211000c

ここで思い起こすのは震災前、2006年、安倍首相(当時)は国会で福島原発事故と同じ事態が起きる可能性を指摘されながら、「日本の原発でそういう事態は考えられない」として、対策を拒否していた。共産党の吉井議員が「原発からの高圧送電鉄塔が倒壊すると、原発の負荷電力ゼロになって原子炉停止(スクラムがかかる)だけでなく、停止した原発の機器冷却系を作動させるための外部電源が得られなくなるのではないか。」と質問。安倍首相は「外部電源から電力の供給を受けられなくなった場合でも、非常用所内電源からの電力により、停止した原子炉の冷却が可能である。」と強弁した。
詳しくはこちら⇒ https://www.excite.co.jp/news/article/Litera_933/

当然これらの質疑には東京電力もしくは所謂原子力村が首相の答弁をバックアップしていることと思う。安倍晋三氏がそう原発の知識が豊富だとは思えない。原子力村の傀儡でしかなかったわけだ。

それはともかく、東京電力は、この時もそして今も「事故対策をしてこなかったし、する気もないようだ」と断定出来る。いかに平和ボケといわれようとも、地震国日本で十分な対策をとらなかった東京電力をはじめとする原子力村には恐れ入る。

話は変わるが昨6月12日、《「共産は破防法対象団体」政府答弁書決定 鈴木宗男氏質問に》というニュースが流れた。テロの可能性や暴力革命の可能性と危険を鑑みてというわけだろうと推察するがいささかどころか荒唐無稽な時代錯誤だ。

今見てきたように主権者の代表の質問に憲法を踏みにじって、へらへらと嘘の答弁をする政府・自民党のほうが遥かに「破防法でいう監視」を必要とするのではないか。

東電や原子力村、そして憲法を踏みにじる政府・自民党には決着をどこかでつけなければなるまい。2年後におこなわれるという「汚染水海洋放出」の前にである。

「思考停止の国民が許す」というのもいい加減にすべきだ。それがこの秋までに行われる衆議院選挙だと思う。